- 作者: 半藤一利
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/04/04
- メディア: Kindle版
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Kindleの月替わりセールで買った。ちょうど8月だったし、あの戦争の詳細をあまりよく知らないので、いい歳した大人だったら知っておくべきと思ったから。
再映画化されている「日本のいちばん長い日」の原作を書いた人でもあったことを初めて知った。
目次
第一章 幕末史と日本人
第二章 日露戦争と日本人
第三章 日露戦争後と日本人
第四章 統帥権と日本人
第五章 八紘一宇と日本人
第六章 鬼畜米英と日本人
第七章 戦艦大和と日本人
第八章 特攻隊と日本人
第九章 原子爆弾と日本人
第十章 八月十五日と日本人
第十一章 昭和天皇と日本人
新聞と日本人
読んでみて
こういう表現が適切かどうかはわからないけど、面白かった。 タイトルから、難しそうな内容と想像してしまいそうになるが、語り口調であるのに加えて、筆者が毒を吐いてたり、「(笑)」とか書かれてて、なんだか緩い感じ。
日露戦争以降の政治であったり、世論などについて、 筆者が独自に取材したことを踏まえて、時代の背景や人物がどう考えていたかなど筆者の推測も交えながら書かれている。
自分の日本の近代史に関する知識は「学校の授業+α」でしかなかったので知ることが多かった。
日露戦争が「勝った」というよりは「負けなかった」くらいのものであったこと。明治と昭和天皇を取り巻く政治家・軍人の根本的な違い。など。
歴史は勝者によって取捨選択されているのはわかっていたが、その勝者の中でも都合の悪いモノは歴史から消えてしまうということはあまり意識してなかった。
日露戦争時にいろいろヘマをやらかしているにもかかわらず、「勝った」という熱狂の中でその教訓をきちっと残すことができなかった。確かに、失敗を語る前に昇格してしまうと、「お、おう」となって語るタイミングを逃してしまうというのはありがちな話。しかし、後世の人間がそれを知ることなく、「勝った」という栄光だけで事を進めてしまったというのが昭和時代の失敗といえるだろう。
自分たちが欧米列強から守り抜いて作り上げた明治。その時代の人は欧米の力を身をもって知っていた。だからこそ、開戦には慎重になっており政治的解決を試みるもやむなく開戦するしかなかった訳だが、並行してアメリカに仲裁を打診するなど「どうやって戦争を終わらせるか」を考えた上での開戦だった。
一方、昭和はというと、直接欧米とやり合った人は少なくなり、「日本はロシアに大勝した」という都合のいい一部の事実をベースに、「やってみなきゃわからん」という考えで開戦。もちろん、「どうやって戦争を終わらせるか」を考えていないので、政治的な裏工作もなくいけいけどんどん。そりゃぁ、いい方には転ばんわなぁ…
筆者が以下のように書いているとおり、
日本人は外圧によってナショナリストになりやすいようです。いいかえれば、時代の空気にたちまち順応するということになる。状況の変化につれて、どうにでも変貌できる。そんな人たちは、戦争の悲惨の記憶が失われて、時間が悲惨を濾過し美化していくと、それに酔い心地となって、再び殺戮に熱中する人間に変貌する可能性があるのじゃないでしょうか。
じゃあ、熱狂に流されないためにはどうしたらいいか、と問われれば、歴史を正しく学んで、自制と謙虚さをもつ歴史感覚を身につけることです、と答えることにしています。
まさにその為の入り口に立つ為の一冊といえる。
最後に、
焼夷弾による無差別爆撃や機銃掃射を体験したわたくしは、かならずしもアメリカ好きではありません。でもね、米国によってはめられている首枷をはずし、日本の誇りをとり戻す教科書、靖国参拝、憲法改正など、ナショナリズムを強く反映する政策を選択したほうがいい、とはそんなわたくしでも考えません。国際的協調よりもナショナリズムを優先する政策のいいはずはありません。そのためにも日露戦争後にしっかりとした国家観と世界観を持てなかったという過去をくり返さないようにしないといけませんね。歴史を知ることでこれからの日本が進むべき道を、みんなして真剣に考えましょう。まだ間に合いますから。
大した力も知識もないが、本屋に並ぶ「すげぇよ日本」系の本に影響されないよう*1、少なくとも自分の頭で考え、「本当にそうか?」という視点で物事を見るようにしたい。
ちなみに、この本を読んで「日本のいちばん長い日(決定版) 運命の八月十五日」にも興味が出てきたので、勢いでポチって読んでたりする。
余談
特攻隊に関する章に以下のような記述があった。
日本人の特技だなんて、とんでもない。技術とお金がない分を全部人間の命で贖ったわけです。ほかに手段がないから精神主義に頼る、若者たちを犠牲にする。こういう風潮は、今もありますよね。
うんうん。たまに聞く話にそんなのあるなぁ。
おしまい。
*1:読むこと自体ないと思うが